先日ソフトバンクが発行済株式の過半数にあたる51%を購入して、傘下に収めたLINEモバイルの2017年決算が公表されました。
決算は大赤字
LINEモバイルは、非上場会社なので上場企業に比べると公開される財務情報は限られているのですが、官報に掲載された2017年1月から12月までの決算を見てみました。
売上よりも原価が高い・・
決算公告に掲載された損益計算書の要旨から主要な数字は以下のようになっています。
- 売上高:約33億8500万円
- 売上原価:約38億6770万円
- 販売費:約28億2800万円
- 営業利益:-約33億1100万円
- 経常利益:-約33億1200万円
ここで注目すべき点は、売上高よりも売上を出すための原価の方が高いことです。
LINEモバイルは、他のMVNO同様にSIMフリースマホも販売していますが、そういった端末を仕入れて売る際にキャンペーンなどで安く売っている場合があるので、そういった部分で売上原価の方が売上よりも高くなっているのかもしれません。
後は、仕入れた端末が売れていないということも考えられます。
また、33億の売上に対して販売費が約28億円もかかっています。
LINEモバイルは、2017年からテレビCMをはじめ広告宣伝に費用をかけていましたが、投資が利益につながっていない状態ということになります。
2016年決算と比較
LINEモバイルは2016年9月にサービスを開始したばかりなので、2017年の決算がまだ2期目です。
1期目の決算広告では損益計算書がないので売上や営業利益は不明ですが、余剰利益金から純損失が約8億1000万円あったことが分かります。
そして2期目の33億円の赤字を加えて、2017年末時点の余剰利益金はマイナス約41億円となっています。
利益が出ないのが速度低下の原因か
LINEモバイルはサービス開始当初は、MVNOとは思えない通信速度を発揮し、格安SIMのヘビーユーザーに注目されました。
しかしその後、お昼時を中心に速度は大幅に低下し、他のMVNOと変わらない速度となってしまいました。
MVNOがお昼時など利用者が多くなる時間帯でも通信速度を維持しようとすると、ドコモなど回線を借りている企業に対して多額の費用を支払う必要があります。
しかし、LINEモバイルの決算をみるに帯域を確保する余裕は無かったということなのでしょう。
MVNOの生き残りとソフトバンクへの売却
LINEモバイルはサービス開始からまだ2年も経っていないベンチャー企業で、まだまだ先行投資の段階だとは思いますが、LINEは事業の継続判断を非常に早く決断する企業として知られます。
そのため僅か1年半の期間であっても、投資に対する利益が今後あまり見込めないと判断して売れるうちにLINEモバイルをソフトバンクに売却したといえそうです。
2017年にはテレビCMをバンバン放送していたMVNOのフリーテルが経営破綻し、格安SIM事業は楽天モバイルに譲渡され、端末事業がMAYA SYSTEMに事業譲渡されたことはまだ記憶に新しいところですが、MVNOの事業が単独で生き残っているのはかなり厳しいことが今回のLINEモバイルの決算でも感じられます。
2018年4月からソフトバンク傘下となったLINEモバイル。
今後ワイモバイルのように利益を出せる存在となれるのでしょうか?
ソフトバンクの舵取りに注目したいと思います。